
2009年世界のIT景気 回復探る(4〜6月期)
1.ネットサービス堅調
主要IT企業の4〜6月期決算によると、ネットサービスの普及を追い風に米アップルやグーグルが増収増益を確保、インテルも市場予想を上回るなど、底堅い業績となった。一方、MSは2桁の減収減益となり、ネット事業のてこ入れを急ぐ。足元の業績にはばらつきはあるものの、業界内には「需要低迷の最悪期は脱した」との見方が広がりつつある。世界のIT景気は回復を伺う局面に入りつつある。
高性能携帯(iPhone)で新たな市場を開拓したアップルは快走が続く。iPhone販売は7.3倍の521万台に増え、売上高が8%減ったパソコン事業の穴を埋めた。パソコン並みの高性能に加え、ネット上からソフトをダウンロードできる仕組みが人気を集めている。iPhone 向けソフトは65,000種類に達し、ソフト開発者と共存共栄する事業モデルも確立されつつある。
ネット小売最大手のアマゾン・ドット・コムも売上高14%増と2ケタ増収。既存の小売各社が苦戦する中、割安な価格や品揃えが評価された。
ネット広告分野ではグーグルの一人勝ちの様相だ。景気低迷と競争激化で書状環境は厳しいが、同社は人員削減などこれまでのリストラが奏功し純利益が過去最高を更新した。パソコン用基本ソフトへの参入も表明。ネット広告を軸に勢力圏の拡大を急ぐ。対照的にライバルのヤフーは3四半期連続の減収だった。
インテルはパソコンの頭脳部品MPUの販売が伸びず、売上高が前年同月比で15%減。ただ、前期比では3四半期ぶりに増加。小型・低価格のノートブック型パソコン「ネットブック」向けのMPU「アトム」関連売上高に限れば前期比65%増と大きく伸びた。
億週委員会から科された独禁法違反の制裁金支払のため最終損益は22年ぶりに赤字。だが、市場は「特殊要因を除けば予想を上回る」と業績回復の兆しと受け止めた。
一方、同社と「ウィンテル」の盟友関係にあるMSはネットブックの普及など市場の変化に対応が遅れた。パソコンやサーバー販売が振るわず、打撃を受けた。主力のパソコン用OS「ウィンドウズ」部門は売上高、営業利益とも3割減った。パソコン販売台数が世界で5〜7%減った上、旧世代の安いOSが搭載されるネットブックの普及で収益力が低下した。収益基盤建て直しへ10月にパソコン用新型OS「ウィンドウズ7」を世界発売。11月にはネット経由で各種ソフトを提供するクラウドコンピューティング事業にも進出する。
業績回復で先行するのが韓国勢。サムスン電子の営業利益は前年同月比5%増の2兆5200億ウォンと世界景気後退前の水準まで戻した。販売価格上昇で液晶パネル部門と半導体部門の営業損益が黒字転換を果たした。
IT大手の4-6月期決算
(単位億ドル、カッコ内は前年同期比増減率%)
社名 売上高 最終損益 内容 ▼ 好調・改善組 ネットサービス普及など追い風 IBM 233
(▲13)31
(12)ソフト部門の好調が機器不振を補う アップル 83.37
(12)12.29
(15)iPhone販売好調 制裁金響く インテル 80.24
(15)▲3.98
(−)ネットブック用MPU好調 グーグル 55.23
(3)14.35
(19)ネット広告事業は安定。最高益更新 アマゾン 46.1
(14)1.42
(▲10)ネット小売好調。訴訟費用などで減益 サムスン電子
(兆ウォン)32.51
(12)営業損益2.52
(5)半導体、液晶パネル営業黒字転換 LG電子
(同)18.66
(13)営業損益1.41
(▲21)薄型TV出荷45%増 ▼ 不調組 ネット戦略の遅れなど影響 MS 130.99
(▲17)30.45
(▲29)パソコンOS不振、ネット部門も赤字 ヤフー 15.73
(▲13)1.41
(8)ナット広告不振続く AMD 11.84
(▲13)▲3.35
(−)MPU低迷、競争激化で11四半期赤字 ノキア
(億ユーロ)99.12
(▲25)2.87
(▲73)携帯出荷減と価格下落で5期連続の減益
2.パソコン・半導体販売も下げ止まり感 企業の需要は低調
IT業界では、需要低迷の底は打ったとの認識が広がり始めている。今年春までは人員削減の表明などが相次いだが、4〜6月期決算では業績不振組を含め、大型のリストラ策を打ち出した企業はなかった。業界団体や調査会社によると、パソコンなど主なIT関連市場は一般消費者の需要をけん引役に2010年には本格回復に向かうとの見方が多い。
パソコンや半導体は販売減に下げ止まり感が出てきた。米調査会社によれば4〜6月期の世界パソコン出荷台数は前年同期比3.1%減。3四半期連続の前年割れだが、同6.3%減としてきた予想を上回った。
米国半導体工業会がまとまた5月の世界半導体売上高は前年同月比23.2%減。前年同月割れは8ヶ月連続だが、前月比では5.4%増で3ヶ月連続でプラス。半導体は正常化しつつあると見ている。
回復の主役になりそうなのは個人。米調査会社は09年のパソコン出荷台数を前年比4%減と見込むが、個人利用が多いノートブック型は12%増を予想。始めたノート型がデスクトップ型を上回ると見ている。アップルはiPhoneの販売地域の拡大などで7〜9月期も2桁増収になるとの予想を立てている。
一方で企業のIT投資は回復が遅れている。IBMの4〜6月期も情報システムに遣う高性能コンピューターなどハード部門は売上高が前年同月比25%減。顧客別売上高でも製造業や金融業向けは前年割れだった。
企業予算絞込みを反映、米インタラクティブ・アドバタイジング・ビューローなどによれば1〜3月期の米ネット広告市場は前年同月比5%減と6年ぶりのマイナスを記録した。
主要IT企業の4〜6月期決算によると、ネットサービスの普及を追い風に米アップルやグーグルが増収増益を確保、インテルも市場予想を上回るなど、底堅い業績となった。一方、MSは2桁の減収減益となり、ネット事業のてこ入れを急ぐ。足元の業績にはばらつきはあるものの、業界内には「需要低迷の最悪期は脱した」との見方が広がりつつある。世界のIT景気は回復を伺う局面に入りつつある。