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イノベーションに挑むCIO 改革への戦略とビジョン

CIO(最高情報責任者)は企業のイノベーションの担い手だ。本来のCIOのIはInformation(情報)だが、Innovation(変革)と置き換えていいかもしれない。企業経営に欠かせない情報を統制するだけでなく、経営者を支えてイノベーションを実現する責務を持つのがCIOだ。彼らがいかなる戦略とビジョンを持っているかが企業価値を決める。

1.情報の「清流化」進め 世界共通仕様へ移行
    トヨタ自動車 常務役員 天野吉和氏

急激なグローバル化の進展の中で、トヨタの情報システム部門はTeam TOYOTAの基盤を提供する中枢だ。24時間、365日、いつでもどこでもだれでも情報にアクセスできる環境の創出が我々情報システム部門の使命だ。

そのための具体的な取り組みとして、まず物理的なネットワークの構築とデータセンターの整備を図り、一連のサプライチェーン・マネジメントを標準化した。また情報システム部門のアプリケーションを統一し、それを支えるコールセンターやヘルプデスクを設置することで、バックヤード体制も強化している。現在は従来に比べはるかに情報の精度が求められており、情報の「清流化」、つまり誰が見ても分かるように、情報や事象のレベルを整理し正規化することに努めている。

FAで標準化

国や地域のよる品質やオペレーションの格差を防ぐために、日本だけでなく世界のトヨタで徹底した共通化を図り、業務の選択と集中を促進している。トヨタのEA(エンタープライズ・アーキテクチャー)化に基づく標準化は、業務管理プロセスをどこまで世界共通にするか、多少のゆとりや融通性を持って決定している。

情報投資とはシステムの寿命を考えながら、なおかつインフラなどのハードを掛け合わせて行うもの。要は、仕事の仕方とそれに見合う設備投資であると考える。業務の内容が変わらなければ情報投資の意味がなく、あくまで業務プロセスの変化に基づいたシステム開発であるべきだ。システム開発ではスケジュール、工程、管理方法、予算の取り方、作業のコーディングなどを世界共通化し、適宜評価する。費用対効果の測定は難しく、トヨタでは納期、開発、期間などを根拠に、事前評価項目を策定している。

権限委譲やセキュリティー分野での新しいフレームワーク作り、技術者やオペレーションを行う人たちの資質や能力を均一にするための人材育成は、品質保持に欠かせない。セキュリティーや危機管理システムへの対応などもグローバルに展開しており、情報部門としてのリスク対策はほぼ整った。

求められる資質:CIOにはモノ作りの経験必要

CIOに求められる資質は、情報システムに造詣があり、実際にモノを作った経験があることが大切。さらにプロジェクトマネジメントに通じていることが望ましい。ユーザー部門のニーズを上手に引き出し、本質を見抜くためのコミュニケーション能力も必須。業務の途中であきらめずに結果を出す姿勢が製造業に限らず共通して求められる資質だ。


2.ユーザーの利便性 経営スピードが鍵
    三井物産 執行役員 CIO・情報戦略企画部長 栗田敏夫氏

総合商社を取り巻くビジネス環境変化の特徴は、対象マーケットのグローバル化の急速な拡大やビジネスモデルの多様化が挙げられる。ネット通販を例にとれば、需要と供給がリアルタイムにつながることで、従来に比べてはるかにきめ細かく、素早く個別マーケットのニーズに対応していくことが常識になったのではないか。

マーケットの微細化が進み、経済人口一人一人が外に向かって積極的に働きかけ主張する「顔の見える」経済単位になっている。B to Cにおける顧客志向が強い製品は、ドラスティックな環境変化、多様化・複雑化への対応を余儀なくされている。その結果、ともするとビジネスプロセスが見え難くなり、業務のコントロールが難しくなっている。したがって、ITを活用して業務プロセスを意図的に細かくコントロールし、透明性を高めていく必要がある。また外部環境変化のスピードが早くなっており、経営判断に必要なデータを迅速に提供できるITを標準装備し、常に更新していくことが、企業の競争優位性の確保や経営効率化に必要不可欠になっている。

当社では基幹系業務(受発注・受渡・決済にいたるプロセス)をERPで標準化している。ERPは経営管理面からメリットが多いのが特徴だが、実務現場における日本固有の決め細やかな業務への対応のためには、アドオンにいる機能追加も必要でありコスト面での負担は小さくない。それ故、うまくプロセスの標準化を推進し、同時に信頼性の高い統制環境を実現させることで、投資効果を最大限にすることがポイントになる。

金融商品取引法に先立つ米国SOX法を契機に、内部統制の実績が経営課題となっている。

内部統制は企業価値を最大化していくための大前提だ。IT活用による内部統制の強化はグローバルで拡大し続けるコンペティション時代への対応とも言える。

当社は変化の時代のIT戦略として、パッケージソフト導入や、オープン化・共有化につながるベストプラクティスの追求を行っている。基本はパッケージソフトを置きながら、いかにユーザーの利便性とスピードを尊重していくかがイノベーションの鍵となる。


3.「世界の東証」へ市場の変化に即応
    東京証券取引所 常務取締役 鈴木義伯氏

ものごとの本質を見抜くためには、必然的に起こりうる変化に脅威を抱くのではなく、積極的に行動を仕掛けることが大切。変化をチャンスと捉え、ビジネスに活かすべき。そうすることで、変化に対する強さや柔軟性が養われ、リスクを軽減する事が可能になる。

市場全体の大きな環境変化の中で、東京証券取引所は「世界の東京証券取引所」に変化していかなければならない。もはや競争市場は日本ではなく世界であることを認識する時代に来ている。そのためには市場全体を理解し、市場の信頼性を確保することが絶対条件であり、競争に負けないシステムを整備し、市場の激変に臨機応変に対応していく必要がある。

ビジネス起点に開発

大規模なシステムをマネジメントするうえで最も苦労するのは、能力やスキルのばらつきをいかにコントロールするかだ。開発プロセスとその管理とを標準化し、SEやプログラマー、テスト要員のための教育プログラムを構築し、確実に実施していくことが重要。東証の場合は、システムをつくるというよりは、ビジネスに見合うシステムをそのように調達し、開発したものをいかに上手に運用していくかが求められる。またグローバルマーケットの変化を的確に捉え、急激なトランザクションの増加と言った不測の事態にも可及的速やかに対応できる仕組みが必要だ。世の中の要求を先取りし、十分なリスクマネジメントによって事業継続を可能にすることが企業や投資家の信頼へつながる。

創造性が必須

IT部門に長い経験を持つCIOにとって、ITを活用したビジネスの創造性が求められる。また、ビジネスの精通したCIOにはITのスキルが求められる。そしていずれのCIOにも共通して重要な資質は創造性だ。ITが基幹業務の中枢に使われる企業では、経営やビジネス戦略における創造性が問われる。そしてCIOが組織を動かすことが出来る体制を構築することも重要だ。創造性豊かなCIOを育成するためには、経営センスのある人材にIT教育を施すこともそのひとつの方法である。

情報システムの日米格差は、事業のアウトソーシングに対する考え方に顕著に見られる。日本の一般企業は、ITの高度化の速さを考察すると、自社で人材を育成し維持することは困難だ。むしろアウトソーシングによって自社の負担を減らし、優位な提案や能力を持つ外部のたけたアウトソーサーを活用することも最善策になる。


4.高度な人材育成で国際競争力強化を
    総務省 政策統括官 寺崎明氏

近年、ICT(情報通信技術)をビジネス戦略に活用する意欲が向上している。一方、その必要性を感じながらも対応できないでいる企業が多数存在することが明らかになっている。現在、高度IT人材の不足数はおよそ35万人と推計され、中でもCIOの人材不足が著しい。企業の競争力を高めるICT人材の育成は急務だ。また、地域の情報化は地域の発展を目指すうえで重点課題。自治体のITガバナンスの向上を目指してCIOやCIOスタッフを対象にした継続的な研修を実施している。

成長にICT寄与大

我が国のICT産業の実質GDP成長に対する寄与率は40%で、経済成長に与える影響は非常に大きい。ネットワーク系機器、携帯端末、ソフトウェアなどの国際競争力に課題の残る分野を強化し、日本のICT産業が世界市場を先導貢献していくための{ICT国際競争力強化プログラム}を現在検討している。

日本にはICTを積極的に活用し、組織改革などのイノベーションを通して生産性を向上する力があるはず。しかし多くの分野で実現しておらず、競争力の差が生じている。ユビキタス化に向けた組織改革を行っている企業とそうでない企業の生産性を比較すると、約2倍の開きがある。より多くの企業でICT経営のベストプラクティスを導入し、国際競争力を強化していく必要がある。そのためには、各企業がICTイノベーションに積極的に取り組める環境を整備していかなければならない。ICTを活用した具体的な経営革新を効率よく推進するためにも、ユビキタス社会に対応した共通プラットフォームやインフラの構築、標準化が重要だ。

強み活かし飛躍へ

ここ10年、米国の高い経済成長率は企業のICT投資の増大に支えられてきた。その間、日本のICT投資の伸びは低調だった。90年代後半以降、日米におけるICT投資と労働生産性の関連性を見ると、米国の労働生産性の伸びは日本の1.7倍となっている。ICT投資が経済成長にも貢献していることは明らか。人口減少下であっても生産性を向上させ、高い経済成長率を実現するには、ICTの積極的活用が不可欠だ。

我が国は、世界最先端のブロードバンド・ネットワークが整備されており、企業がICTを積極的に活用するためのインフラ整備が進んでいる。今後、各企業のICT資本の蓄積が進み、それがネットワーク化されることによって、飛躍的な生産性の向上が実現されるだろう。日本には世界に先駆けてユビキタス社会を実現し、経済成長の持続的な拡大伸張段階に移行するポテンシャルがある。日本の強みを活かす基本戦略を産学官で共有し、実行することが重要になる。

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