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先端ICTで切り拓くビジネスイノベーション
世界ICTカンファレンス2010

企業や組織の活力を高める推進力として情報通信技術(ICT)が注目を集めている。
最新のICT活用の事例や将来を展望した具体的なソリューションを企業経営者に向けて提案した。

1.イノベーションを経営に活かす(クラウド時代の経営戦略)

変化をプラスの推進力に 市場に合わせた戦略策定

早稲田大学ビジネススクール 教授 内田和成氏

イノベーションには技術偏重ととらえがちだが、その他に3つある。
第一は、画期的な技術を使わずとも、それらを新しい視点から組み合わせることで、より良い製品やサービスを提供する「コンセプトのイノベーション」。例えば携帯プレーヤー「iPod」。第二は、ビジネスプロセスを画期的に改良する「プロセスのイノベーション」。ユニクロなどのSPA(製造小売り)が代表例。第三は、組織の意思決定の仕組みを変えたり、そのスピードを大幅に向上する「組織のイノベーション」がある。グーグルの所ごとの進め方が好例。
とりわけ、ネットワークやICTが発達した今、PCや携帯電話はクラウド技術などを活用することで、イノベーションが生まれやすい環境が現出した。実際、さまざまな業界でイノベーションが続々と起きている。それらが電気自動車の登場に匹敵するほど業界のビジネスモデルを一から覆すような画期的なイノベーションなのか、それとも小さな変化を促す程度のものなのか、そのインパクトを的確に見極めることだ。
カメラ業界は近年、まさにこうしたイノベーションの波にもまれてきた。デジタルカメラが急速に普及した結果、写真は街角にあるDPEショップで紙に焼いたり、家のプリンターで印刷したりする以外に、PCのハードディスクドライブに保存するものもあるという意識が若者を中心に広がりつつある。このような意識の変化を受けて、カメラでは印刷品質ではなく、これまでとは異なる要素が製品の差別化要因となる可能性が出てきた。
音楽業界もまた、大きな変化のうねりの中にある。アナログレコードからCDへと転換したが、あらたにネット配信が登場したことにより音楽産業のあり方が根本から変わりつつある。 同様のイノベーションの大波が今後、各人が所属する業界、会社で起き、異業種競争が加速するかもしれない。それに対して、現在のビジネスモデルに乗り越えるのか、あるいは現在のビジネスの延命を図るのか。要は、イノベーションをどのように受け入れるのか次第だが、変化をマイナスのドライバーとしてではなく、プラスのドライバーとしてとらえ経営戦略を策定していくべきである。そして、その際に重要なヒントになるのは、消費者やお客様の視点であり、市場のニーズであろう。

2.企業競争力を高めるクラウドコンピューティング

早稲田大学大学院ファイナンス研究所 教授 野口悠紀雄氏

日本企業がクラウドコンピューティングを導入し、競争力を高めていくうえで、3つのポイントがある。
第一は、クラウドを使うための社会的なインフラを整備できるかだ。それには物理的なものもあれば、目には見えないソフトウェア的なものもある。前者の代表例には、電力と電波がある。クラウドに限らずインターネットの利用には、電力と電波がどこでも使える社会でなくてはならない。
言い峰、後者としてはクラウドの円滑な利用を促すサービスなどがある。米国における社会保障番号を利用した税務サービスはその好例だ。米国では国税庁のサイトにアクセスし、自分の社会保障番号を入力するだけで申告がどのように処理されたかを知ることができる。日本でも同様にオンライン納税が可能だが、本人認証のため非常にめんどうな手続きが災いして利用者が低いのが現状である。
第二は、基幹的な業務にクラウドを導入できるかだ。例えば金融機関が基幹的な業務すなわち資金の出し入れなどのすべてのデータをクラウドに載せられるか。
なお、クラウドの有効性を認めながら、第三者データを見られてしまうのではないかという根拠にない“恐怖症”を克服する必要がある。また、実際にクラウドを導入しても、それに合わせた意思決定の仕組みに変えられないかも課題になる。ここらが日本におけるクラウド利用に対する本質的な障害になる可能性を否めないだけに心配だ。
第三は、クラウド供給者の競争を確保できるかだ。メーンフレーム全盛時代はその市場が独占ないしは寡占的な状態で、利用者コストが高く、利用者が限られていた。これがコンピューター利用のすそ野を広げる上で、大きな障害要因となっていた。
コストが安く、だれもが平等に、かつ自由自在にコンピューターを使えるということは、実は競争があって初めて可能になる。だからこそ、我々は独占や寡占を許さず、クラウド供給者の競争を確保・維持していかなければならない。
このようにクラウドは単なる技術の話ではない。コンピューター利用について非常に大きな転換を含んでいる。クラウドコンピューティングは、我々に基本的なものの考え方の変化を要求しているのである。この3点のいずれにおいても日本がクラウドに適した社会構造なり、組織構造なり、企業構造に転換する必要があるが、日本企業はそれらを克服してこそ、クラウドの本質である情報処理における分業のメリットを享受できるようになるだろう。

3.新たな価値を創造するクラウド利用

NTTデータ常務執行役員ソリューション&テクノロジーカンパニー長CTO 山田伸一氏

企業経営においてITは戦略を実現していくうえで欠かせない道具であり、新しい仕組みを導入するにあたってITの変更は不可避となっている。しかもITを変更するために必要な期間やコストは企業のスピードを左右することにもつながっている。
開発期間を短縮するとともにコストを圧縮しスピードアップを図る手段の一つが、クラウドコンピューティングだ。従来のように情報システムを「所有」するのではなく「利用」することで、経営スピードの向上が可能になる。ITにも「守り」と「攻め」がある。企業競争力に直接効果がある部分は自ら所有する。一方、必要ではあるが直接競争力に関係ない部分はクラウドを利用するなどしてコストを下げる。そして、削減した分を「攻めのIT」に改めて投資していくべきだ。
現状では、クラウド導入を躊躇している企業も少なくない。クラウドを利用することに対してセキュリティーやカスタマイズ、既存システムとの連携を不安視する声があるからだ。NTTデータでは「BizXaas」というクラウドサービスを提供している。セキュリティや信頼性はハイブリッドはクラウドについては、システムインテグレーションで培ったノウハウを盛り込むなど各種ニーズに対応し、好評を得ている。
企業で起きている動きと、コンシューマーの世界で起きている動きはかなり違う。コンシューマーの世界で一足先に起きている動きをきちんと理解し、それに対応していく必要がある。間もなくスマートフォン市場がパソコン市場を上回る。そういう時代にあって。モバイル利用によるリアルタイムのコミュニケーションやコラボレーションの機会がますます拡大していくことは間違いない。
コストを引き下げ、ワークフローを効率化していくことだけが、クラウドのメリットではない。クラウドの本質は、データ活用とコラボレーションにこそある。企業の中に閉ざされている情報を、利用活用可能な状態で公開し、データ同士をつなぎ合わせることで新たな価値創造が期待できる。さまざまな人々のコラボレーションも、クラウドという基盤があってはじめて加速できる。ただ、こういったデータ活用には、標準化や個人情報の取り扱いといった課題がある。その課題にも対応し、企業の中にある膨大な情報をベースに、『競争』と「協調」をうまく使い分けて全体最適化を図ることが、企業の競争力強化に不可欠となろう。

4.ビジネスに効くクラウド、クラウド活用の意義とGoogleの企業向けサービス

グーグルエンタープライズ部門プロダクトマーケティングマネジャー 藤井彰人氏

スピード経営に対応できる環境を提供する最適な仕組み

グーグルのCEOのエリックシュミットが「クラウド」という言葉を使ってから、今では「クラウドコンピューティング」という言葉はバズワードのように使用されている。クラウドコンピューティングという用語自体には技術的用語のように明確な定義がないが、グーグルでは「共有インフラ上で構築され、ウェブブラウザを通して提供される、ホスティング型アプリケーション、もしくはプラットフォーム」だと考えている。
グーグルでは今起きているコンピューティングトレンドの3つの変化に注目している。ひとつはコンシューマーテクノロジーの急成長。個人が無料のメールを活用しているのに対して、企業のシステム環境は遅れが目立つ。コンシューマー側のイノベーションに注目し、企業内IT環境においてもっと生かすべきだろう。
2番目はモバイルインターネットの爆発的な普及。特に日本は3G携帯電話の普及率が世界で群れを抜いて高い。ネットモールの中には既にパソコンより携帯電話からの売り上げの方が多いところもある。今後パソコンを超えてスマートフォンが普及していくことを考えても、新たな企業経営での活用が期待される。
3番目はクラウドコンピューティングだ。クラウド導入の目的は当初、「コスト削減」が主だった。それが2,3年前からクラウドベースのサービスを活用することでビジネススタイル、ワークスタイル、ライフスタイルの変化が起きることが注目され始めた。そして現在は「テクトニック・シフト。つまり構造的・質的な転換が議論の中心となっている。
クラウドサービスの一つに「Google Apps」がある。オフィスツールを提供するサービスだが、会議の際に複数の人が同時にクラウド上のデータにアクセスし、共同編集して情報を共有することで、極めて短時間で用件を済ませることができる。実際にグーグル社内では、本ツールを活用し、極めて効率的に作業やミーティングが進められていく。
もうひとつ重要な変化は、企業に集まる情報量が年々増加していることである。本来は経営戦略上も重要なIT部門が拡大するデータと情報システムの運用・管理に追われているのが実情だ。これだけデータ量が拡大し、コンピューティングトレンドが変化する時代に、減価償却が完了するまで4年や5年と言った単位で日々進化するITに対応できないのは非常にリスクが高い。さらなる生産性の向上や経営のスピードアップが求められる今、まさにクラウドはそれらに対応した環境を提供できる最適なツールと言える。

5.マイクロソフトのクラウド活用による戦略的ICTの実現

MSテクニカルソリューション エバンジェリスト西脇資哲氏
MSクラウド&アプリケーションプラットフォーム製品部長 吉川顕太郎氏

パブリックとオンプレミスのハイブリッド型を積極提案

インターネットの向こう側にあるコンピューティングリソースをオンディマンドで自由に活用していくパブリッククラウドが拡大期に入った。現在、MSでは、データセンターのサーバーを毎月1万台規模で増設している。サーバー増設をスピードアップするために、コンテナ型からモジュラー型へと移行しつつある。シカゴにあるデータセンターの場合、数か月前には220個のコンテナで55万台のサーバーを運営していたが、現在はさらに拡大している。
パブリッククラウドを提供するベンダーに重要なのは、圧倒的な価格優位性、サービス・レベル・アグリーメント(SLA)による稼働保障、そしてオンプレミスつまり自社で保有するコンピューターリソースへの復帰が可能かどうかということだ。コスト重視でクラウドを利用する部分と、自社のリソースを活用する部分で移行や復帰が自由にできることが重要だ。
MSはビジネス・プロダクティビティ・オンライン・スイート(BPOS)を提案している。これはオンプレミスで提供していたグループウェアをオンラインで提供できるようにするサービスだ。また我々はクラウド上の基本ソフト(OS)として「Windows Azure Platform」を提供している。オープンな言語を活用したアプリケーション開発やSQL Serverのデータベース機能を提供しており、これをオンプレミスに移行できる点も特徴である。今後はパブリッククラウドとオンプレミスを組み合わせた「ハイブリッド型」のクラウドを積極的に提案していきたい。
オンプレミスのデータも、クラウド上のデータもその活用方法には全く差異はない。クラウドだからといって新たなソフトが必要だったり、操作法が変わったりはしない。例えばExcelのデータをオンプレミスで書き換えて、それうぃクラウドにコピーして複数人で同時アクセスして活用できるし、逆にクラウド上で作成したデータをオンプレミスに移行して使うことも全く同じ操作でできる。
アクセスが集中しそうなときなど、サーバーの台数を手元のパソコンからサーバー台数を減らせる。つまり、クラウドなら無駄なコンピューティングリソースを保有する必要がない。自社で開発したアプリケーションもクラウド上で活用したり、オンプレミスで活用したりと、柔軟でスケーラビリティーの高いシステム活用がクラウドで可能になる。

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