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日本の未来を拓くIT国家戦略

慶応義塾大学総合政策学部教授 国領二郎氏

進化するITの力をフルに活用 豊かさを予感できるビジョンを示す
ITやデジタル情報の活用は、社会変革を促し新たな成長をもたらす推進力として期待される。日本のIT戦略はどのような将来像を示すべきなのか。

1.世界の課題に先手

Q:IT国家戦略の見直しを行った背景は。
A:まず、世界経済の構造が根底から変化しつつあることを理解する必要がある。今までのように大量生産・大量販売の経済発展モデルで世界全体を豊かにしようとすれば、資源の面でも地球環境の面でも破綻してしまうのは明らか。地球環境の保全と経済成長をどう両立させるか、長寿化しても活力のある社会をどう保つかなど、これから世界規模の課題になっていく問題が山積している。こうした変化と同時にIT自体をめぐる環境も大きく変わってきており、ネットワーク基盤の信頼性向上、膨大な情報の適切な選択・活用などに向けた課題も顕在化している。
しかしITには、経済活動や社会の在り方を一新し、新しい活力を生み出す力がある。特に近年のITの進化は目覚ましく、今まで困難と思われたさまざまな課題解決への糸口が見え始めている。100年に一度のパラダイム転換の後も日本が世界経済の重要な一角を担い続けるためには、20世紀の後遺症的な課題を、先手を打って解決していくことが重要だ。今こそITの潜在力をフルに活用し、長寿健康型の社会、循環型社会を本気で設計していかなければならない。国民が豊かな未来を予感できるビジョンと、強みを生かした抜本的な改革戦略が必要だ。

2.日本の強みを生かす

Q:日本の強みを生かす戦略とは。
A:まず技術面の強みとしては、既にネットワークインフラが高速大容量化しているし、モバイル機器の利用技術でも日本は一歩先を行っている。非接触IC技術とセンサーを利用した「Suica」「Edy」などの個人利用も進んでおり、また高度道路交通システム(ITS)や自動車関連のアプリケーションなども、日本が世界をリードできる技術の一つだ。
デジタル情報活用の面では、映画や音楽、ファッション、漫画、アニメーション、ゲームなどのすぐれたコンテンツが強みだ。また医療・健康分野の個人情報は秘密性の高い情報だが、秘密化して個人の特定ができないデータに生まれ変われる。そうすれば疫学的に大きな視点で医療を高度化するデータベースを作ることも可能になる。

3.利便性を国民が選ぶ

Q:具体的な施策の柱は
A:1.電子政府・電子自治体、 医療・健康 、教育・人財 の3つの重点分野で抜本的な構造改革を進めること 2.産業・地域の活性化と新産業の育成 3.デジタル基盤の整備 の3本柱だ。
三大重点分野では、民間サービスと行政サービス、行政機関同士のサービスの各種サービスがシームレスにつながるようにするなど、国民の利便性を第一義に考え、しかもその利便性を国民側が権利として、選択的に享受できる環境を提供することだ。
障壁を取り除く
Q:デジタル情報活用に向けた今後の取り組みで、重要なポイントは
A:創造的で自在な情報活用の普及の前には3つの壁が立ちふさがっている。「情報がデジタル化されていない」「システム同士がつながらない」「制度上の制約、または活用能力の不足により活用ができない」壁だ。デジタル化されるべき有用な情報をリストアップしてアクセス可能にし、システムがつながらないことで十分な活用ができない情報をつなげ、デジタル情報の活用を阻む規制・制度・慣行、教育を徹底的に見直すことだ。実行に当たっては強力な権限を持つ政府CIOが
指揮をとり、第三者機関による監査などの制度化を行うこともポイントだ。
これからも進化し続けるITとデジタル情報を国民・企業のために活用することを目指す新戦略を実行していけば、我々の生活に直結する構造改革を世界に先駆けて実現できるだろう。