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価値創造のIT新たな可能性

1.世界同時不況下での経営:
構造変化に応じたビジネス演出 「環境」「健康」「文化」へシフト

早稲田大学教授 榊原英資氏

2008年度の日本の貿易収支が28年ぶりに赤字に転じた。今、日本経済、また世界経済に様々な変化が起きている。問題はこれが循環的なものか、それとも構造的なのかということだ、
そもそも今回の危機はアメリカの金融バブル・消費バブルの崩壊が発端だ。サブプライム問題が発生して、膨らみすぎた金融資産は現在ほとんど不良債権化している。消費バブルも崩壊した。これらのことは、20世紀のアメリカ型資本主義の崩壊を意味する。豊かだったアメリカを象徴したものは「自動車」であり、「スーパーマーケット」、「ファーストフード」だ。これらはみな下降トレンドに入っている。対して21世紀のキーワードは何か。「環境」であり、「健康」、「文化」だ。キーコンセプトが明らかに変化している。
そこで先ほどの世界経済に今何が起きているかの問いの答えは、循環的ではない構造的な変化が起きていると推測できる。とすれば企業経営は大きな転換点にあるといえる。循環的な不況なら、2,3年我慢すればよい。しかし構造的なものならビジネスモデルの大転換が必要だ。現状のままでは破綻するところもあるだろう。例えば若者の自動車離れが言われるが、時代の変化の中で自動車もコモディティー化してきたということだ。ではものづくり日本はどこへ行けばよいのだろう。
答えは明確だ。経済構造のサービス産業化を一層進めなければならない。特に日本を取り巻く環境を考えると医療、農業、教育などの分野は有望だ。自動車メーカーが農業に参入したり、学校を認可制から届け出制にするなどしたら大きな発展が望める。ただしこうした成長産業を阻害する規制の網はどんどん撤廃する必要がある。
おそらく数年は続くと思われるこの大不況が終わったとき、世界は変わっているだろう。3年ごとに車やテレビを買い替えるのではなく、健康や安全を追い求めるようになる。成熟社会、豊かな社会とはそういうものだ。


2.世界不況を生き抜くための企業戦略:
「現場力」や当事者意識を高める 市場原理だけの視点考え直す

三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長 中谷 巌氏

IMFによる2009年の世界の経済成長率はマイナス1.3%で、日本は最も厳しいマイナス6.2%に落ち込む見通しだ。サブプライムローン問題に関与していない日本の経済見通しが、米国や欧州より厳しい理由の一つは、長年続いた円安がもたらした輸出依存体質にある。世界不況で輸出が大幅に減少した今、内需主導型の経済体質への転換が不可欠だ。
そのための重要なポイントの一つは、日本企業が本格的な高齢化社会に対応する新たな商品・サービスの開発に注力することだ。また、権限と財源を中央から地方に移譲する「廃藩置県」ともいうべき大胆な制度改革も必要ではないか。
雇用面では「派遣切り」が大きな社会問題となっており、雇用対策も重要なテーマだ。市場メカニズムの発想で雇用をとらえると、今回のような不況時には労働力は過剰になり、過剰なら解雇すればいいことになる。市場の調整機能が働き、賃金が下がることで労働需要が再び増え、需要と供給がマッチングするという考え方だ。しかし、現実にはそうはならない。
日本の企業の強さは「現場力」にある。現場の従業員の一体感や当事者意識がこれまでの日本企業を支えてきた。現場の力が強いからこそ、ものづくりにたけた、高い国際競争力が生まれた。
こうした日本組織に市場メカニズムを単純に当てはめ、解雇という安易な形で雇用に手をつけてしまうと組織は分断され、強みの「現場力」を失うことになる。現場の一体感は損なわれ、当事者意識は低下してしまう。企業は来世をどうとらえるべきかを改めて考え直す必要がある。


3.グローバル・パラダイムの転換とデジタル経済の新潮流:
社会システムに溶け込むITを格差解消しだれでも利用可能に

住信基礎研究所主席研究員 伊藤洋一氏

リーマン・ショック以来、金融不安が広がり、世界経済は大きな危機を迎えている。今回の危機で特徴的だったのは、米国で起きたことがあたかも自国で起きているかのように、危機がITによって瞬時にグローバルなインパクトを与えたことだ。
危機をきっかけに、これまで経済活動を抑制するものととらえられてきたエコが、世界経済の景気を刺激する起爆剤として認識されるようになった。例えば自動車産業がガソリン車から電気自動車や水素自動車へと、今後大きく舵を切る可能性は高い。産業構造は大きく転換し、その中でITが果たす役割も劇的に変わるはずだ。ITは今や特別のものではなく、通常かつ普遍的技術としてあらゆる製品に溶け込み、IT産業は成熟産業になった。だからといって、IT産業の成長が今後望めないわけではない。これまでにも成熟産業において大きな変革をもたらす製品が発売され、それが需要を喚起したケースがしばしばあった。IT産業も業界全体で取り組み、これからも成長を勝ち取らなければならない。
日本のIT業界が今後成長していくうえで取り除くべき障害をいくつか問題提起したい。
IT産業は企業システムの基礎技術であり、それに沿った組織改革が不可欠だ。各社独自のシステムが乱立して大きな社会的負担になっているのが現状だ。これは企業のトップが実はITをきちんと理解していないことに起因しているのではないか。
セキュリティー意識も希薄で、消費者のITシステムに対する信頼感を著しく損ねている。
IT産業の繁栄には、所得やITリテラシーのデバイドを解消する必要がある。今までのようにできる人だけがどんどん先に進むというIT社会は終わり、だれにでもITが使えるような社会に変わらなければならない。
変革期の日本社会でITが果たすべき役割は大きいにもかかわらず、このようにまだ多くに問題を抱えている。ITは既に製品には深く溶け込んでいるが、社会システムに溶け込むことがこれからの課題だ。


2009世界のICTサミット

「クラウドコンピューティング」や「スマートフォン」などインターネットの利用法が再び進化している。新しい情報通信技術(ICT)世界同時不況を克服する救世主となりえるのか。
今年はインターネットの前身、米国防省の「ARPAネット」の誕生から40周年に当たる。世界を網の目のように結んだネットワークは、「クラウドコンピューティング」と呼ばれる新しい情報通信インフラをもたらした。
無数のサーバー群を表すクラウド(雲)は、様々な情報をネットの向こう側から提供し、文字通り、いつでもどこでも情報にアクセスできるユビキタス情報時代が到来した。それを実現したのがネットの普及に伴うオープンなソフトウェアの開発環境である。
情報通信技術の発展は一方で新たな課題も突きつけている。膨大な情報機器が消費するエネルギーや迷惑メールに象徴される「情報大洪水」の問題だ。個人情報の流出などセキュリティやプライバシーの保護も大きな課題である。
「世界ICTサミット」は、そうした情報通信分野における新しい課題や技術の動向を探るのが目的だ。「情報消費社会の未来」と題した今年の会議では、クラウドや携帯端末など新技術の動向を検証し、映像配信やメディアの再生などにどう役立てていくかを議論する。


1.ICT、社会の発展加速
行政での活用課題

直近5年間で日本のICT産業のGDPに対する寄与度は34%に達した。しかし医療や教育、雇用などの分野でICTの活用はまだ進んでおらず、国民は本当の良さを実感できていない。
「クラウド」への対応急務
今年の「世界ICTサミット」は、米国のテレビ放送がアナログからデジタルへと変わる歴史的タイミングに開かれた。米連邦通信委員会のジョナサン委員は「景気回復の担い手としても情報通信技術への期待は大きい」と強調した。
放送のデジタル化開始は1998年秋。英国、米国が先陣を切り、米国は移行まで約10年を費やした。パソコンやデジタル機器の登場を受け、それらと親和性の高いテレビ放送を実現する狙いだった。
デジタル技術の広がりは新聞や放送など既存のマスメディアにも激震をもたらした。マスコミやジャーナリズムはコンテンツと紙や電波等の伝達手段が一体化して力を持つ。しかしデジタル化の進展により、その伝達手段をアップルやグーグルなどに奪われてしまった。
特に今回話題となったのがクラウドコンピューティングだ。企業も個人も、もはやソフトウェアやデータを自分で持っておく必要はない。いつでもどこでもネット上のサーバーから取り出せばよくなった。放送のデジタル化はその傾向をさらに加速するだろう。
自前主義を好む日本の課題は世界のクラウド化の流れに十分対応できていないことだ。携帯電話の「ガラパゴス現象」も日本の縦割り構造が背後にある。クラウド時代に成功するには垂直統合モデルを排し、情報共有などオープンな経営モデルを築く必要がある。
「情報消費社会」とは情報が円滑に流通し、個人も企業もそれを自由に操れる時代を表す。日本も地デジ移行まであと2年1か月。新の情報社会の実現まで我々に残された時間は多くない。


成長支える新技術
経済危機の立ち向かう各国の新技術
1.米の長期的成長に寄与 米連邦通信委員会委員 アデルステイン氏

米国はブロードバンド政策で日本から10年遅れをとった。回線スピードは日本が10倍、料金は半分だ。前政権の8年間は市場競争に任せればいいと考えていたが、通信大手2社の競争だけでは普及にはつながらなかった。オバマ政権はブロードバンド整備などに七十二億ドル(約七千億円)投入する。この政策はすぐに雇用を創出するだけでなく、長期的な成長に寄与すると確信する。


2.総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課長 谷脇康彦氏

日本では携帯電話加入者が一億人を超え、ブロードバンド回線は98.5%の世帯で利用可能になった。2010年度にブロードバンドゼロ地域をなくすのが目標だ。インフラの普及は中長期的には民間主導でやるのが最善。政府と民間がどう役割分担するかが大事だ。景気刺激策も大切だが、そのためにNTTのような支配的企業の力が高まっても困る。


3.英ビジネス・企業・規制改革省ビジネス関係ディレクター デービッド・ヘイドン氏

その通りだ。ただ競争政策の身は問題を解決するとは思えない。支配的企業が自ら行う投資への意欲を妨げないようにおしながら、他者との公正な競争条件を維持しなければならない。英国の場合、光ファイバーの全国展開は全人口の3分の2までは民間企業の努力でできるが、残りの普及にだれが資金を出すかが問題だ。
通信のインフラ、サービス業界、メディア業界、放送業界のそれぞれの専門家に意見を聞いた。


4.始動する次世代モバイル
監視機能などに必要に

通信のインフラやサービスは固定通信から携帯電話、移動中もつかえるモバイルインターネットへと進化してきた。
現在はより多くの家電が通信機能を持つ「アンビエント時代」に入り、様々なネットワークを一体的に利用するようになった。今後は有線や無線を意識することなく、各種のネットワークを連続的に利用できる技術が進展するはずだ。さらに、携帯電話やテレビなどの間でコンテンツを安全にやり取りするための監視機能なども必要になるだろう。
日本の携帯電話市場が独自の進化を遂げてガラパゴス化したのは、国際標準ができていなかった時代にデジタル化を推進したためで、過去の問題。次世代モバイル市場で日本メーカーが国際競争力を回復することは可能だ。
ガラパゴス化は通信会社が技術仕様を仕切ったのがいけなかった。通信会社は免許を受けて事業展開しており、グローバルな競走を意識していない。通信機器メーカーが主導して技術仕様をまとめていれば、日本発の技術を海外展開するのに役立っただろう。
米国のベンチャー企業では30年先の技術動向を予測して経営戦略を立てている。日本のメーカーが国際競争力を持つには長期戦略が必要だ。
日本の産業界が強みとしているのは情報家電の分野だ。こうしたメーカーには今後、次世代高速無線「WiMAX」の通信機能を搭載した新たな情報家電やサービスを開発して、海外に輸出するビジネスモデルを構築してもらいたい。
韓国の企業文化でいい点を挙げるなら、忍耐強いことだ。第一世代の携帯電話機を開発してから海外進出するまで10年かかった・高い技術力を持つ日本のメーカーが次世代モバイル市場で成功をおさめるのは確実だが、時間はかかるだろう。


2.生まれ変わるメディア

インターネットによる動画配信の市場が伸びているが、WOWWOWは当面、衛星放送を中心にコンテンツを提供するという軸足は変えずにやっていく。BSの有料放送は受信機の普及でまだまだ伸びる余地がある。独自制作のドラマやドキュメンタリー番組を質、量ともに充実させたい。
有料放送の世帯普及率が欧米に比べ低水準なのは、積極的に多チャンネル市場に加わらなかったCATV会社の責任も大きい。ただ、CATVには大きな潜在力がある。全国で約3000万世帯がケーブルでテレビを見ている。NTTの光ファイバーを上回る世帯カバー率だ。これを有効活用するために、様々な対策を打っていくことが必要。
本格的な多チャンネル時代をにらみ、対応が遅れていたハイビジョン化を今年度から積極的に推進していく。コンテンツの充実も併せて取り組む。価値観の多様化が進み、視聴者の目は厳しい。きめ細かなニーズの対応する必要がある。
新聞業界は変革の時期を迎えている。米新聞業界の不振はダウ・ジョーンズも例外ではないが、信頼されるコンテンツ提供に注力していく。読者がお金を払う価値を見出してくれるコンテンツについては広告ビジネスも成長の余地があると思う。


3.放送・通信の融合先取り

NHKは3カ年計画で、多様な媒体を使って番組・情報を視聴者に届ける事業ビジョン「スリー・スクリーンズ」を打ち出した。テレビ受像機とパソコン、携帯電話の3種類に向けて、視聴者が必要な情報を時間、場所を問わず受け取れるようにする。見逃がした番組や過去の番組を視聴できる「NHKオンデマンド」はその一環だ。
NKHの放送以外のサービスには否定的な意見もあるが、それでは公共放送の潮流から取り残される。放送界の先頭集団として放送・通信の融合サービスを先取りしていきたい。


クラウドコンピューティング
1.システムを身軽で柔軟に、機動的な事業展開支える

現在の難局を乗り切り、次の飛躍に向かうには、企業活動の基盤となるITの見直しと整備が欠かせない。今までのITシステムは自社での構築、運用が中心だったため、事業環境変化への対応力やスピード、規模などの点で、事業展開の足かせになることもあった。そうした中で、いま注目されているのがクラウドコンピューティングだ。これを利用することによって、企業はネット上の膨大なIT資源を自社システムの一部として自由に組み立て、事業展開を加速することができる。企業経営変革の上で、大きな役割を果たすクラウドコンピューティングについて考えてみたい。


2.ネット上のIT資源を自在に活用

厳しい経済環境下、企業は様々な形でコストを削減し、次の展開を見据えた戦略的準備を進めていく必要がある。もちろん、ITシステムの見直しも欠かせない。企業活動の基盤として、競争力を左右するきわめて重要なカギを握っている。
今まで多くの企業は、業務の中心となる基幹系システムだけでなく、メールなどの情報系システムまで自社で構築し、運用してきた。メールやスケジュール管理などは止めることができないシステムであり、その運用や保守はシステム部門にとってかなりの負担になっている。また、海外も含めた企業買収など積極的な事業展開を図っている企業では、コミュニケーションの円滑化のために、メールアドレスのドメイン名を統一しようとすると、大変な費用と時間がかかる。
こうした問題を解決し、機動的な事業展開を加速させる役割を果たすものとして、多くの企業が注目しているのがクラウドコンピューティングだ。ネット上の膨大なIT資源を自由に使う新しいコンピューター利用法だ。企業はこれを活用することで、信頼性の高い強固なITインフラと高性能なアプリケーション、巨大な処理能力などを、まるで自社のシステムの一部のように使いこなせるようになり、ITシステムを自由自在に作ることができる。
この考え方に立って、メールシステムをクラウドに切り替えれば、大きなコストと労力をかけることなく、グローバルレベルでメールシステムを刷新できる。クラウドによって、今まで考えられないほど身軽で柔軟なITが実現するのだ。


3.仮想インフラ提供サービスもスタート

クラウドは最初、CRMやメールシステム、グループウェアなどの業務アプリケーションをネット経由で提供する「SaaS」だけだった。しかし、最近では、認証や課金システム、開発環境などITシステムの共通基盤を提供するPaaSやITインフラそのものを提供するHaaSにまで広がっている。
SaaSは米国が先行して導入が進んでいるが、国内でもグループウェアや会計ソフトなどのベンダーが提供を始めた。PaaSは現時点ではSaaSを動かすための基盤システムとして提供されるケースが多く、米国ではサービスが始まっている。HaaSはまだあまりなじみがないが、サーバーやストレージ等のハードウェア資源をサービスとして提供するもので、仮想化技術をフルに活用したインフラを貸し出す点が特徴だ。
米オンライン書籍販売のアマゾン・ドット・コムは、現在欧米で展開しているHaaSを今年中にアジア地域で始める予定だ。今まで日本企業がこのサービスを利用しようとすると、太平洋をまたいでデータがやり取りされるため、ネットワークの遅延が発生していた。アジアで運用されるようになれば、遅延の問題は解消し、日本企業にとって使えるサービスとなる。今後も新たなサービス形態を追加しながら、クラウドは進化していくだろう。


4.クラウド利用支援サービスも登場

一方、メールやスケジュール管理、インスタントメッセージ管理などをオンラインで行う企業向けクラウドサービスを国内で開始した企業もある。これらは、従来ソフトウェアとして提供されていた機能をクラウド上に移し、サービスとして提供するものだ。これにより、高い機能と柔軟な運用、管理の手間と運用コスト削減の両方の実現を目指している。また、クラウド技術を使って、企業内にエンタープライズ・プライベート・クラウドの構築を支援するサービス開始した大手ベンダーも出てきた。
加えて多くのベンダーが、企業がクラウドを円滑に利用するためのサービスを始めている。とりわけ、既存システムとの併存が中心となるSaaSを使うために、SaaSへのデータ移行や既存システムとSaaSとのデータのやり取りなどを行うサービスがでてきている。このように、企業がクラウドを利用するための環境は急ピッチで整備されている。
変化の激しいビジネス環境下で成長を続けるためには、こうしたサービスを効果的に利用して、次のチャンスを素早くつかむことが不可欠。ITの標準化やリソースの最適化など重要課題の解決に、自社にとって最適な形でクラウドを活用し、事業展開を加速する時期が来ている。


世界ICTカンファレンス2009年9月25日
生産性向上による経営力の強化 、ICTを使いこなす社会環境の実現へ
1.ICT時代が求める人材像―知識か技能か人柄か

ICTは知識が基盤となる社会を支える技術。この時代が求める人材像は、ICTの技術や知識がある人材だと思いがちだ。
現在のような議論は1990年代にもあった。日本企業が盛んに海外進出したころ、採用にあたって語学力を重視するかという点だ。日本在外企業協会の当時の調査では、英語力より人物本位とした企業が52%に上った。ある企業の独自調査でも、面接試験や適性試験結果の方が、その後の評価と相関関係が高いとしている。この傾向は日本企業だけでなく米国でも同様だ。専門知識は決定的要因とは言えず、職場でチームワークを作り出せるようなリーダーシップや協調性が求められている。
そのため米国の大学教育では、7つの視点を重視しカリキュラムを組むという。1.コミュニケーション能力 2.組織能力 3.リーダーシップ力 4.論理力 5.努力 6.集団作業力 7.起業家精神。どれをとっても「技術」や「知識」といった単一の物差しで計れるものではない。企業だけでなく社会は、人々と交わりながら個人の能力を発揮するための基礎となる要素、いわば「社会人基礎力」の向上が何よりも重視される。
この基礎力向上に不可欠な要素では、一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む「アクション力」、疑問を持って考え抜く「シンキング力」、多様な人とともに目標に向けて協力する「チームワーク力」の3つが欠かせない。米大学が重視する視点に当てはめると、リーダーシップと起業家精神はアクション力、論理力と努力はシンキング力、そしてコミュニケーション・組織・集団作業能力は、チームワーク力向上を目標としているといえる。
日本の現状を振り返ると学力低下が大きな社会問題といわれるが、人間力の低下も指摘されている。小中学生の多くが買い物や掃除といった手伝いをしていないのが現実だ。学力ばかりでなく生活力の低下も懸念される。
一方、企業が求める人材は米国でも重視されるアクション力・チームワーク力・シンキング力といった社会人基礎力が不可欠だ。この基礎力をどのように育成したらいいのか。学校の授業では自主調査・発表・議論・報告作成という手順を踏む参加型・実習型授業を増加させる。さらにサークル、ボランティア、アルバイトなどの課外活動へ積極的に参加することが有益だ。
ボランティア活動は能力開発・就職・転職にプラス効果を与えるという調査結果がある。特に上位3つの項目では「相手の気持ちや考えを理解する力」「やる気や積極性」「問題や課題を発見し、改善・解決する力」といった項目の意識向上が目立つ。ボランティア活動参加者の5割以上が、いずれの項目とも向上したと感じている。アルバイト経験者に対する別の調査でも同様な傾向が見られ、社会人基礎力の向上には社会への積極的参加が有効だと判定される。これは学生や教育現場での努力はもちろん、その意思を受け止め現場版「よく学び、よく遊べ」を実践できる社会基盤が必要だ。
ICT時代においては専門知識・技能が大切だが、これに劣らず社会人基礎力を含めた能力適性が高い人材が求められる事実を見落としてはならない。


2.デジタルアイデンティティ―時代のエンドユーザーコンピューティング

現在のコンピューティング環境に求められるものは、管理者とエンドユーザーとの間で大きく異なる。管理者はパソコンや携帯電話など、様々な情報システムの維持・管理とITリソースの能力向上に加え、消費電力の抑制といったグリーン化の推進にも力をそそがなければならない。一方、ユーザーは、仮想デスクトップの利用などロケーションフリーな環境、ポータビリティーの向上を求めている。
オフィスで利用されるパソコンは今後ノート型の需要増大と、デスクトップ型では記憶装置を持たないシンクライアントの増加を予測している。
クライアントパソコン管理の課題を整理すると4つあげられる。1.運用コスト 2.セキュリティー 3.管理の簡易化 4.ロケーションフリー対応 
また多くの企業では、パソコンをハードウェア、基本ソフト、アプリケーションの3層で運用し、管理もそれぞれ行われるため、コスト上昇要因となっている。3層全体を一元管理して同時に更新するには、複雑な運用プロセスと、より多くのコストが必要だと考えられるためなかなか実現できない。
そういった課題を解決するため「フレクシブル・コンピューティング・ソリューション」が開発された。
それはエンドユーザーが必要とするリソースを集中管理し、同時にロケーションフリー環境も実現するソリューションである。このソリューションの特徴は、これまでのITリソースをデバイス単位で整理する手法からエンドユーザーの「デジタルID」を管理する手法に改めたことだ。デジタルIDは、各ユーザーのデータ、設定、アプリケーション、OSなど、個人を一元的に定義する関連ITポリシーで構成されるため、エンドユーザーを管理するだけで、そのユーザーが必要とするリソース全体の管理が可能になる。
もう一つの革新的な点は、データセンターとエンドユーザーの関係を仮想化し、ユーザーにロケーションフリー環境を提供する通信インフラを組み込んでいる点だ。インフラにはロケーションフリー環境に加え、ネットワークで遠隔地のパソコンを起動して利用する環境、リモートアクセスをサポートする端末側の仮想化、データセンターにワークステーションを移行するリモートワークステーション機能も加わっており、エンドユーザーは最適なコンピューティング環境を容易に実現できる。
このITソリューションシステムは、エンドユーザーの生産性と柔軟性向上を実現できるソリューションであり、業務の効率化を低コストで実現可能としている。