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シリコンバレー 日本人 相次ぎ起業

スマホ・クラウド普及追い風

米カリフォルニア州のシリコンバレーで日本人によるIT(情報技術)関連企業の創業が相次いでいる。スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)や、ソフトをネットワーク経由で使うクラウドコンピューティングの普及で起業コストが低下。世界展開のしやすさや、事業が軌道に乗った後に他企業へ売却するといった「出口戦略」の立てやすさも進出に拍車をかけている。

アプリ紹介や電子楽器開発

東京大学の助教や楽天の執行役員を務めた柴田尚樹氏(30)らは6月、利用者の好みに合ったスマホのアプリを紹介するサービス提供会社、アップグルーブスを設立した。利用者がスマホに登録しているアプリを解析・し、選好を探し出す仕組み。8月のサービス開始から10日間で9万人程度が利用を始めた。
柴田氏は2009年にスタンフオード大学の客員研究員として渡米。シリコンバレーの空気に触れて起業した。「日本市場は成長が見込みにくい。大きい市場で勝負すべきだ」と判断。設立から間もない企業を中心に少額出資するファンド、500スタートアップスの支援を受けた。
シリコンバレーでネットワーク関連ソフトの開発会社を設立し、05年に売却した吉川欣也氏(44)は、米グーグルの基本ソフト(OS) 「アンドロイド」を利用した電子楽器の開発会社、ミセルを設立した。インターネットに対応し、友人と楽曲の共有ができる楽器の開発を進めており、12年冬の発売を目指す。
吉川氏は「ITの中心地で大きくなれば世界で注目される」と考え、シリコンバレーでの再起業を決断した。このほど産業革新機構から600万ドル(約4億6000万円)の出資を受け、開発体制を強化する。
久保渓氏(26)はアプリ開発者向けにホスティング(サーバー貸し出し)サービスを提供するフラックスフレックスを設立した。同サービスは利用者の手続きを軽減し、利用容量を自在に増減できるのが特徴。
久保氏は「世界で勝てないサービスは日本でも生き残れない」とシリコンバレーで起業する道を選んだ。さらに「シリコンバレーでは大企業がベンチヤー企業を買収する事例も多く、出□戦略が立てやすい」と話している。

日本人起業家 人脈構築が課題

米デューク大学とカリフォルニア大学バークレー校が2007年にまとめた報告書によると、シリコンバレーにおける起業家のうち日本人が占める割合は7%程度。インドや中国・台湾の出身者と比べて見劣りする。ここへきてスマホやクラウドの普及が追い風となり日本人の起業も増加しつつあるが、弱点を指摘する声も少なくない。
シリコンバレーの大手法律事務所ウィルソン・ソンシーニ・グッドリッチ&ロザーティで日本に関わる案件を長年手掛けてきたヨークン・タク氏は「英語でのコミュニケーションを苦手とする人が多く、人脈の構築が課題」と話す。
日本企業のサポートを長年担当してきた弁護士のジェームス・プレントン氏は、一人で起業し、行き詰まるケースを挙げる。「チームをつくれない起業家は投資家が評価せず、資金調達もできない」と強調する。
チームを日本人で固めている事例もあるという。「日本人同士の方が付き合いやすいのだろうが、様々な考え方や経験を持つ人を組み合わせてチームをつくる方が成長しやすいと指摘。現地でネットワークを広げる重要性を説いている。