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21世紀型技術の実用化

20世紀が資源消費型で人間の利便性を高めたのに対し、21世紀は自然の力を生かして豊かで持続性のある社会を実現する時代だ。IT,バイオ・医薬・エネルギーなどの技術革新が、我々の生活や仕事を大きく変え始めている。

1.小型ロボット「EMIEW2」

「ありがとう」など百単語を理解し、正座も二足歩行もできる小型ロボットエミュー2型。「オフィスの中で人間との共生を徹底して追求した」と日立製作所主任研究員は語る。優れた学習能力がある。部屋の配置など空間を自分で理解して地図を作製。レーダーと地図情報を駆使して、自分の位置や室内の物体を意識しながら自ら判断する。米未来研究所のポール・サッフォー氏は「20世紀の技術開発の特徴が工学的発想だったのに対し、今世紀は生物学的発想が主流になる」と分析する。同氏が典型例として挙げるのが「人工生命」。動物の脳や知能を実現するソフトウェアや、生物の細胞の仕組みを生かした素材「ウェットウェア」が代表的なもので、自分で育つロボットも一種の人工生命と言える。政府や研究機関、産業界は2010年前後をメドに、ビルや工場の中でしか使えない産業用ロボットではなく、どこでも使えるロボットのJIS制定を目指して議論を始めた。日立やトヨタや富士通など、日本を代表する企業も次々と人型ロボットの実用化を急ぐ。自ら収集した情報を基に実用的な人型ロボットを人間との「共生」が視野に入ってきた。

2.IT世界の生物学的発想「Web2.0」

「ウェブ2.0」は人工生命的な特徴を備えた技術群だ。消費者は情報の「受け手」であると同時に「出し手」でもある。一度作ったらウェブサイトやサービスが、消費者から寄せられる追加情報でどんどん育っていく。グーグルの地球・地理情報閲覧システム「グーグル・アース」は成長が眼に見えるシステムの代表格。グーグルは民間で入手可能な衛星・航空写真、地図などを見やすく、引き出しやすい形で用意するが、「あの場所には何があるのか」といったより詳しい情報は利用者が追加していく。グーグルで「アース」のリーダー、ジョン・ハンク氏は「画面での実像体験を通して、地球上のあらゆる場所に出来るようにすることが究極の目標」と話す。
07年12月、アップルとNTTグループは携帯音楽プレーヤー「iPodタッチ」の利用者向けに、都営地下鉄駅やプロントのカフェ店内など700施設でインターネットに無料接続できるサービスを始めた。触れるだけで「いつでもどこでも」ネット接続できるユビキタス社会に向けた実験だ。08年にはNTTがNGN(次世代ネットワークの商用化に野呂出すなど通信インフラでも整備が急ピッチで進む。企業はハード、サービスの両面で、人々の感性に近いIT利用環境の提案に知恵を絞る。

3.次は「環境」

米シリコンバレーのVCが注目し、巨費を投じているのは地球環境や持続可能性に関連した「クリーン技術」だ。
有力VCのクライナー・コーフィールド&バイヤーズ(KPCB)は07年11月、地球環境や持続可能性を尺度とする英投資ファンド、ジェネレーション・インベストメント・マネージメントとの提携を発表。KPCBは1980年代のパソコン革命の火付け役だったコンパックコンピュータや、90年代に閲覧ソフトを広めたネットスケープ・コミュニケーションズや検索技術のグーグルなどの草創期を支えてきた。そのVCが「地球環境」に舵を切ったのだ。
ジェネレーションは、温暖化ガス削減を呼びかけたノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア前米副大統領などが共同で04年に英ロンドンに創設。提携を機にゴア氏はKPCBに共同経営者として参画し、環境技術に関する情報交換や有望企業への協調投資を世界規模で展開していく。
米国での環境関連ベンチャーへの新規投資額(07年1-9月期)は06年の通年実績に比べて約1.5倍に達し、期待の大きさを裏付ける。さらに株式市場では「クリーンエネルギー・バブル」ともいえる現象が起き始めている。
欧米では風力発電事業を軸に国境を超えたM&Aや株式上場が活発。07年6月、NY証券市場に上場した中国の太陽光発電関連企業、天威英利の時価総額は半年で3倍の約40億ドル(4500億円)に達した。
KPCBのドーア氏は「地球環境は全人類共通の課題で、関連技術は巨大な潜在市場。21世紀最大の収益機会になる可能性がある」と語り、地球環境と経済原理の両立が可能であると説く。
生物学・医学における技術開発の潮流も21世紀型に大きくシフトしている。いま、医薬業界が着目しているのは人間の自然免疫を活用した治療技術。国内医薬メーカーが海外企業の買収に走っている「抗体医薬」もそのひとつだ。化合物が病原体を攻撃して治癒するのではなく、生物に本来備わる力を生かそうとの発想が根底にある。
効率や利便性を最優先に追い求めるのではなく、地球環境や人間と調和したしなやかな技術文明をどのように切り開いていくか。新たなイノベーションの時代を迎えた。

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