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新興国台頭、変わる企業戦争。 経営革新の精神 今こそ

米GE前会長兼CEO ジャック・ウェルチ氏

2009年経営環境とIT新潮流 >

世界経済は中国など新興国が台頭し、米国の一極集中が崩れてきた。世界の企業経営者にとって、米国を向いていれば済む時代は幕を閉じた。国家と企業の接近など、金融危機後には新たな競争のルールも崩れつつある。現役時代に「20世紀最高の経営者」と呼ばれた米GEのジャック・ウェルチ前会長兼CEOに企業経営の行方を聞いた。

Q:米国の停滞と新興国の成長で世界の産業界の勢力図が一変しつつあります。
A:GEの経営トップに就任した1980年代初頭もひどい時代だった。米国は舞うなす成長で、失業率も2ケタ。そして、日本企業が米国など世界市場を奪うかの勢いを見せていた。かたや、戦後の経済成長を引きずった米国の大企業は「ビッグでファット」だった。競争力を高めようとすれば、企業文化を変え、よりスリムな組織に作り直さなければならなかった。
当時と今は違う。企業と経営者は別の問題にぶつかっっている。競争はグローバルになり、競争相手はもっと速く動いている。技術や事業モデルのイノベーションがかつてないほど重要になった。
Q:先進国の技術優位が続くとは限りません。
A:イノベーションの創造に報いなければならない。報酬制度は勿論、「彼らがヒーローなのだ」と称賛する企業文化を生み出さなくてはならない。もっと機会を与え、社員を奮い立たせることが、今の経営者の大切な仕事だ。
個々の現役CEOについて評価したくないが、一人だけ触れたい。米アップルのスティーブ・ジョブス氏だ。革新的な製品を作り、成長し続けている。彼自身はたぐいまれな人物だが、革新的な人材を育てることができる。チャンスに恵まれず「ジョブス氏」になれていない人材を掘り起こすことだ。
Q:金融危機と景気低迷が重なったこともあり、米国でも「政府の役割」が大きくなりました。
A:米国の景気が二番底に入るとは思わないが、低成長は続くだろう。失業率は高止まりし、住宅市場は非常に弱い。しかし、問題は規制が多くなりすぎていることや、企業を後押しするような政策が不十分であることだ。私には自由な企業活動を今の政府が信じているとは思えない。
解決策は「イノベート!」「イノベート!」「イノベート!」。起業家に自由を与え、政府は干渉しない。中小企業などに負担をかけるような規制は敷くべきではない。コストを考慮しないような医療保険改革もいけない。政府は「レギュレート!レギュレート!レギュレート!」。別のゲームをしている。

インタビューを終えて:

「何事も否定的な考え方はいけない」「きちんと理解したか」取材中、ウェルチ氏の言葉に圧倒された。激しい舌鋒は現役当時を思い起こさせる。今の楽しみはGE時代と同じく人材を育てることだ。米チャンセラー大学と立ち上げたMBAプログラムにはオンラインで「中国からも学生が参加している」。そこには国境はない。ウェルチ氏は「勝利するための戦略を教えたい」と笑った。社気貢献の一環かと思いきや、その目的を聞くと、意外な返答。「ノー。慈善活動とは違う。投資だ」。「株式等への投資はDo Well」かどうか、だけ。教育は同時に「Do Good」もできる良い機会だ」。現実も理想も語っている。
金融危機は、「市場や企業には社会の安定を脅かすリスクがある」という不信を招いたが、そう単純ではない。ハイブリッド型ともいえるウェルチ氏の発想は、「21世紀の最高」を目指す次世代に経営者たちへの伝言に聞こえた。